タイトル それぞれの心が選んだ道


也視点

静まり返った、遥か都市を離れた場所に、私を含む四人の家がある。
だけど、新年の風が全ての生物に触れる頃
私達はもうすでにここにはいないだろう。

これは、この家に想い残すと決めた
最初で最後の置き手紙である。

人はそれぞれ心というものがあり
色や大きさは様々だが、どれも綺麗なものだ…と
私は今でも信じている。

そして、その心が選んだ道は
彼、彼女らにとって運命の道なんだと思い
その人の家族・友人は見送り、もしくは見守るのだろう。

ここに、私が…いや、あの子が友人だと言っていた人の
選んだ道を書いておこうと思う。

ムンガルト・マーチェ

異大陸の王子様なんだけど
心を知る為に、成り行きでここ(エンタシス)で人とふれあい
その意味を彼なりに把握して
故郷へ帰って、国を支える国王として
市民たちと分かち合い生きている。

ギロメ・フィスター

あの子にとっては仲のいい戦友でも
私にとっては苦手。
言葉より先に行動に出るから
少し恐いな。
彼は今も現役のガーディアン。
鳥人族ペシュを守りながら
バリバリ働いている。
いつか、フィスター専用の
ジム(?)を建設しようと
お金と信頼をコツコツ貯めている。

レイカ・ヒイロ

金持ちなので贅沢に生きているかと思いきや
レイカは人の収入に頼らず生きていくと決めたので
いろいろなスキル(資格)を身に付ける為に
大都市スイーズンに留学中。

兄は二人いるが
一人の兄ケイムは自由気ままに連絡もよこさず行方不明。
もう一人の兄スレンは、ヤングスターで知り合った人と結婚して
エージェントの仕事を無理なくこなしている。

アルエ

毎日の様に彼(ヤン・バスク)のもとへ行っては
なかなか帰ってこない。
帰ってくるのは、誕生日とクリスマス会…
要するにご馳走がありそうな時だけだ。
その笑顔にいつも癒されて
ついつい食材とお金を費やしてしまう。
その後の生活は苦しいけど
また…会えるといいな。

あと、満や千夜、他のアウトサイダー達はリアルに帰り
それぞれの生活を満喫しているだろう。

そう…あの子も含めて。

あの子の話の前に
この家の主、サモクリスのことも
書いておかないと…。

サモクリスは…母親リアンを抜く薬屋に
なりたくて、魔術と薬草等で薬を調合して
それを扱える資格もとって
いざ薬屋を開店するぞって時に
……えと、なんというか
大切な人と去ってしまった…のかな。

その大切な人とは、あの子のことで
ここ(ドリプラ)に落とした物を見つけたので
リアルに帰っていって
サモクリスはそれについていったっていうこと。
もちろん、サモクリス自身の意思で。

あの子はそのことを
何度も止めたが、聞いてもらえなかったみたい。

当たり前にあったものが急になくなったこともあって
環境が氷が水蒸気になるくらいの勢いで急変した。
ディアスやセアリとも慣れない日々が続いたけれど
私が、本当の霜月也。
クリスマスも過ぎて
最近そのことをやっと打ち解けれた気がする。

あのハイテンションで、野蛮で
サモクリスにツッコミばっかり決めている
あの子ではありません。

あまり話上手じゃなくて、引っ込みがちな所もあるけど
そんな私でも
心の決めた道があり、今は進んでいこうと思う。

それは…。

「おーい!也、荷物の準備はできたか?」
ディアスがノックの直後大声で問いかけたので
驚いて手紙を隠した。
「え…ごめん、もうちょっと待って」
「これから、あいつらに挨拶してくるから、セアリのこと頼むな?」
「う…うん、わかった」

去っていく足音を確認して
手紙の続きを書いていこう。

なんだっけ…あ、そうだ。
私の決めた道!!

えと…それは改めて言うのも照れくさいけど
「ドリプラの管理人」になること。
やることはサモクリスから大体聞いている。
でも、それだけじゃ足らない。
まだ知らない異大陸のことも
沢山知らないとダメだよね。

なので、準備が出来次第
ディアスとセアリと一緒に
旅に出ようと思うの。

ディアスとセアリは
旅の途中で
自分が本当にしたいことを見つけるとか言って
契約を外さないままいてくれることに
正直嬉しく思っている。
戦いになる可能性だって十分にあるのだから。

「出航は明日…ですね」
セアリが背後からヒョッコリ顔を出して
ついでにお茶を入れてくれた。

「ありがとう、行くときには家に置いてある魔力注入器を全部持っていかないとね」
「フフ、也さんと共にいる時は、魔力は消耗しませんし、少しだけでいいですよ?」
異大陸にも、きっとありますよと付け加えて
セアリは微笑んだ。

そう…これから始まる私達の冒険。
その行方は風のみが知る。

END





  

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