タイトル イケメン行商人ヤン・バスク後編

プロローグ(バスク視点)

人の心(気持ち)は天気や自然現象の単語を使えばよく伝わるらしい。
昔、父親が僕に教えてくれた。
「大切な友人が雨の時は傘を差し出して、晴れの時は共に笑ってあげなさい」
僕はあなたがいない今でも、その言葉を大切にしている。
そして、アルエや也、スウ民族のみんなが
かけがえのない太陽の様に感じている。

「伯父、現る」

サモ視点

ヤンバスク…彼の過去を知る風を追いかける。
サモ「前出会った時から、どこか違和感を感じていた」
これからも也やアルエと親しくしていくならある程度知る必要がある。
サモ「見つけた…えっと、どれどれ」

ヤンバスク、現在25歳 性別 男
故郷 アザール(スウ民族の里からおよそ10kmの街)
兄弟 なし 両親は16年前に不治の病で死亡
その後は父の弟、ヤン・リギョンと同居。
しかし、5年前に街を発ち、行商人として各地に住まいながら
スウ民族が作る特殊な粉を売っている。

サモ「ふむ…ヤン・リギョンといえば、ここでも名を知る大金持ちではないか」
也「サモ…さっきから何一人でブツブツ言ってるの?」
サモ「わぁ!!きっ…君か、背後からいきなり声かけるな!!」
ふと、振り向くと風はどこかへ去っていた。
サモ「むう…行ってしまったか」
也「へ?なんのこと??」
サモ「別に…それで今日も会いに行くのか」
也「うん、スウちゃん達にクッキーの作り方を教えにな」


バスク視点

今日も朝から夜まで晴れ、世界も僕自身も。
スウ粉の便利さに街のみんなは喜んで買ってくれるし
それによって、お金に余裕ができるから
更に遠くの街までスウ粉を広めることができる。

いつも通りの仕事を済ませて
隣の隣の街まで馬車を借りて進んでいく。
利用すれば高い金額がいるが、時間と残金を考えると乗ることにした。

そこに一人先客がいた。
立派で整った服装をしていて、紳士みたいな雰囲気を感じた。
まとめると裕福そうな男性、まぁそれもそうか。
この馬車は高いから、一般人はなかなか乗れない
でも、どこか見たことがある人。
?「まさか、お前がこの馬車に乗るとは驚きだ」
声も聞いたことがあるような?
?「なんだその目は、俺を忘れたのか?この親不孝者」
そうだ、思い出した。
その人は父の弟でもあり、僕の伯父だ。
?「思い出したようだな、バスク」
まだ理由は言えないが、僕は伯父が嫌いで街を飛び出した。
だから、自然と言葉が出てくる。

バ「できることなら会いたくなかったよ」

リ「フフフ、言うじゃないか。貧乏な生活していたら会わなかったさ」
大金が入った袋が目の前で踊った。
それから伯父は、僕の仕事のことを聞き出して
流石は我が息子と言っては肩をドンドン叩いた。
リ「バスクよ、金があれば何でも手に入る、夢も叶う、多いことに越したことはない」
そして、お金の弄れた価値を大声で宣言する。
正直いうと恥ずかしい。
お金があれば女は寄ってくるとか
お金があれば友を見返せるとか
一緒にいた頃と全く変わっていなかった。

リ「ところで、さっき話に出てきたスウ!うん!次はスウがほしい!!」
バ「は?」
リ「そいつがいれば、いちいちお前から買い取らなくてもスウ粉が手に入る」
人気もあるんだ、さぞかし美味いだろうと笑いながら言う。
バ「スウ民族は売り物じゃない!!」
リ「なに、犬や猫だと思えば買えるだろう、粉を作る為の機材の全てを買取ろう」
バ「伯父さん!!何馬鹿なこと言ってんだよ!」
僕の声が届いていないかのように、伯父は話を進める。
リ「3月1日なら、洞窟を渡る為の護衛も用意できるだろう
よし、その日に里へたんまりの飴を持って行くとしよう」
バ「だ・か・ら!!そんなの駄目に決まっているだろう!!」
リ「お前が決めることではない!!長っていうのに会って交渉する!!」
馬車の揺れがゆるくなって、目的地が見えてきたが
到着後、去っていく伯父の背中を睨みつけながら
そのまま、引き返して帰った。

そう、隣街に宣伝するよりも、もっと大切なことがあったから。

スウ民族の里に着いて、なにやら甘い匂いがする。
ア「あーバッくーん!!」
スウ粉で作ったクッキーの匂いか。
也「最近、繁盛してるって長から聞いたよ。凄いな」
食べる?と小皿に盛ってくれた。
長「凄いぞ、皆の頑張りが世界中に伝わるのじゃ」
みんなの口からサクサクと音が聞こえる。
スウ民族達「スゴイスゴーイ」
サモ「んむ、あ、勘違いするな、凄いのはスウ粉だから」
也「お前…空気読めよ」
バ「わかってるよ、それで皆に話があるんだけど」

伯父との会話を説明する頃には夜になっていた。
みんな、最後まで真剣に聞いてくれた。

也「要するに、長が断れば良いだけの問題だろう?」
サモ「この里でしかスウ粉はできませんみないな感じか」
ア「でも、簡単に諦めてくれるかなぁ?」
バ「ありとあらゆる方法で手に入れようとすると思う」
長「いいかお前たち、何をもらっても首を横に振るのじゃ」
ブンブンブンブンブンブンブン。
スウ民族達「イヤイヤイヤイヤイヤイヤっていうの!!」
也「はは、みんなすでに首を横に振る練習をしてる」
サモ「うむ、では洞窟で足止めさせて行かせぬようにしよう!!」
ア「そうだね!ネイルとかリズとかと脅かしちゃえ」
バ「みんな…ありがとう」

そんな感じで、僕達のスウ民族を守る戦いが始まった。
3月1日まで、あと約2週間(13日)

完結編へ続く。




  

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